
MATLABの講演会で発表をしてきました
1. はじめに
こんにちは、スキャン・エックスの開発担当の板倉です。
2022年11月に、MATLABという数値計算のソフトウェアを提供する、MathWorks Japanから依頼を受けて、オンラインのセミナー(ウェビナー)で発表をしてきました。そこでは、主に、私の学生時代の研究事例を紹介し、残りの時間で、ローカスブルー株式会社の提供する、スキャン・エックスに応用した事例紹介を行ってきました。本記事では、その講演の振り返りを投稿したいと思います。また、もし、他の企業や団体さまから、依頼を受けて講演をされるかたがいらっしゃれば、その参考にもなればうれしく思います。
2. 開催概要
オンライン開催
聴講者:約120人
講演時間90分
〇プレゼン:30分
〇対談形式の質疑応答:45分
〇MATLABの新機能やサービスの紹介:15分本ウェビナーの特設サイトのスクリーンショット


3. 準備に関して
資料について
本ウェビナーでは、学生時代の取り組みを多く話す機会をいただいたので、学生時代のスライドを一部用いました。学生時代の内容も多岐にわたるものであり、できるだけ内容が発散しないように努めました。ただ、実際は、いろいろ盛りだくさんで少々わかりにくかったかもしれません。合計30枚を超えるスライド数で、30分で話せるか不安になりました。
発表練習について
ちょうど講演の前日が祝日であったため、練習も行うことができました。だいたいこのスライドでは、何分くらい、というチェックポイントのような地点を複数用意して、本番早口になったり、冗長になったりしても、それを検出して、修正できるように用意しました。
4. 本番について
発表について
おそらく特に大きな問題なく講演を終えることができました。権限の問題で、はじめの約10秒間が、ミュートの解除や画面共有ができず、焦りました。それらが解除されるまでの10秒が永遠のように感じられました。
対談形式の質疑応答について
こちらも、おそらく特に大きな問題なく終えることができました。講演の内容に加え、勉強のしかたなどのより広い範囲の話も質問していただき、嬉しかったです。
5. いただいた質問の例とその回答
実際にいただたいた質問の例と、私の答えた内容を覚えている範囲で書きたいと思います。
質問1
研究分野から実務への適用にあたって大変だった部分はありますか?
回答1
いろいろな種類の3次元点群ファイルに対応したアルゴリズムを作ることが難しいです。研究をしていた時は、使うLiDARやカメラはある程度限られていますし、そこで用いられるファイル形式や、点群の密度、ファイルサイズ、保存方法などは自分である程度コントロールすることができました。しかし、現在は、多くのお客様に使っていただいていて、あらゆるファイル形式やファイルの内容に対して、汎用的に使えるアルゴリズムが必要です。例えば、ファイルが大きすぎて、メモリアウトしてしまう、点群の様子がいつもと違うのでうまく分類できない、といった問題などが、起こらないように、アルゴリズムを作りこんだり、例外処理をうまく作ることが難しいです。
質問2
これからMATLABを業務で利用するユーザに対して、どのような学習の仕方を勧めますか?また、業務利用に当たってMATLABの知識以外にどのようなスキルが必要だと思いますか?
回答2
とにかくどんどん、ドキュメンテーションの例題を動かしてみること、そしてそれがある程度動くようになれば、自分で取ったデータをもとに当てはめてみることだと思います。個人的な意見ですが、MATLABの例題を動かしてみる段階では、特に、厳密な理解をしておく必要は必ずしもなくて、動かしていくうちに興味を持って勉強したり、パラメーター設定を変えて、どう変えたらどうなるかということを観察するといいと思います。勉強の方法は、シンプルにネット検索で、簡単な記事を見つけて、自分なりにまとめて、ということを繰り返してきました。もしかしたら他にももっとよい勉強の方法があるかもしれません。
MATLAB以外に必要なスキルは、根気強く、継続して取り組める姿勢だと思います。MATLABは他の言語に比べてかなり使いやすいと思いますが、それでもエラーから抜け出せなかったり、実行内容の意味がわからないことも多いと思います。ただ、それでもあきらめず、コツコツとやり抜くことが大事だと思います。時には、研究室の仲間や、職場の人に話を聞いてもらったりして、とにかくめげずに頑張ることが大事だと思います。
質問3
普段の、インプットの工夫や、技術的なことを学ぶ情報源を教えて下さい。
回答3
工夫としては、「人に説明できるか、または説明しようとしたらどうなるか」を常に考えながらインプットすることだと思います。私は、趣味のジョギングやウォーキングのときに、その日の内容などを繰り返し復習して、説明するシミュレーションをしながら定着させようとしています。そうすると、簡単に思っていたことも意外と奥深かったり、わかっていないことに気づいたりできます。さらに、それをもとに、個人でブログを書いたり、社内や研究室で勉強会を主催して、どんどんアウトプットするだけでなく、その知識が役立つことを願い、人々に共有することで自分も理解を深めていくことができました。
また、情報源に関してですが、自分が普段参考にしているのは、ネット検索や論文、書籍などです。特に工夫などはありません。ネット検索でも見つからない場合は、根気強く勉強します。MATLABでは、有名なアルゴリズムは簡単に実行できるので、自分の勝手な理解と実装に基づく結果とMATLABの結果を見比べたりして、どれくらい自分の理解があっているか簡単に確認することができます。またそのような勉強を繰り返すことで、よりドキュメンテーションも、より深く理解できるようになって楽しくなります。
6. 楽しかった点
現在の仕事についてたくさん話せたこと
現在の私の開発の仕事の内容は、学生時代の延長線にあり、これまで学習してきたことが直接的に役に立っています。「アカデミアではなく、企業にて自分の研究やそこで得たスキルをいかしたい」といった学生さんも多くいらっしゃると思います。そういった、自分のやりたいことや、得意なことがあらかじめ決まっている場合は、スタートアップの企業に就職して、そのことやその延長線上の内容に取り組むということもできるかもしれません。
長めの対談形式の質疑応答
これまでは、私は、学会発表の質疑応答といった、質問に答えるスタイルの発表が多く、誰かと対談する形で進めたのははじめての経験でした。さらに、その時間も長く、うまく話せるか不安でした。対談をしていただいた、草野さんにも、私の説明不足な点もくみ取っていただき、ある程度スムーズに進んだのではないかと思いました。対談形式では、1度の私の回答で終わることなく、さらに深めてもらったり、わかりにくい部分を修正・補足していただけたりするため、自分の考えをよりうまく伝えられるのではないかと思いました。
7. 難しかった点
同時に、難しい点もありました。
聞いている方の反応がわからないのでペースや説明の粒度を調節しにくい
こちらはオンライン発表でよくある話だと思います。対面のように反応を見ながら話せないので、自分の内容が伝わっていそうだとか、質問の回答に納得してもらえてそうだとか、そういったことがわかりにくかったです。どれくらいの内容を前提として話したらよいかなどが難しかったです。対面であれば、質問に対する回答が不十分な場合は、なんとなくそれを察することができる場合もありますが、オンラインだとそれが難しかったです。
8. 伝わればよいと思ったこと
何やら3Dの計測や解析は楽しそうだ
このウェビナーでは、3D点群(モデル)の利活用に向けた、解析の話などをさせていただきました。現在、3Dの情報を直接的に業務や研究で使われている方は多くないかもしれません。しかし、3Dスキャナーやそれを積載するドローン (UAV)も急速に発展しており、さらに、最近はLiDARを搭載しているスマートフォンも存在します。どんどん3D計測は身近になっていて、それらがもっと有効活用されるようになればよいなと思っています。今回のウェビナーで、「何やら3D情報をもっと使ってみるのも楽しそうだし、ワクワクするな」と思っていただけると幸いです。以下の動画は、iPhone LiDARから取得した3次元モデルから、こちらで作成したコードによって自動的に葉を検出した時の結果です。非常にきれいな3Dモデルが得られています。これと解析技術を組み合わせることで、いろいろとおもしろいことができそうです。

9. 感想
長時間でしたが、多くの方に発表を聞いていただき、嬉しかったです。自身のこれまでの取り組みなどをじっくりとお話しできてよかったです。今後は、ローカスブルー株式会社にて、3次元点群の有効活用の事例を増やし、またこのような講演ができればうれしいです。それまでよい成果を出せるよう頑張っていきたいと思います。